思いよ届け、93歳おばあちゃんの短歌
私が高校の時、国語の授業で石川啄木の「一握の砂」の二つの短歌が紹介された。
「はたらけど はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざり じっと手を見る」
「ふるさとの山に向かいて 言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」
先生が他に知っている短歌があれば、挙手をしてください。との話があり教室内は一瞬静まり返った。私は少し躊躇したが挙手をし、次の短歌を紹介した。
「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたわむる」と
この短歌は、啄木の歌集の中でも自分の心の中にすっと自然に入ってきたものだった ので、強く印象に残っていた。
おめもじが 適う様にと 青空に 守り賜えと 静かに祈る
最近、印象に残った短歌があったので紹介したい。この短歌は私の長男の嫁の祖母(おばあちゃん)が93歳の時に作ったものである。おばあちゃんは、現在も元気に農作業などを行っている。
この短歌は難病と闘っている知人にあてた手紙の中に添えられた一句とのこと。知人は、この句を贈られ大変、喜んでいたとのことである。
「日々、難病と向き合い大変なことと思います。この青い空はきっとあなたが見ている青空と同じ色でしょう。私は、あなたの健康の回復をこの青空に静かに祈ります。そして、また、遠い地にお住いのあなたとお会いできることを楽しみにしています」
おばあちゃんは、こんな心持でこの短歌を作ったのではないかと想像している。