千恵の眼

自分の人生の中で勇気づけられた言葉や日々の思いなどを綴っていきたい。

絵本の力

少年の頃、病弱だった。小学校の低学年までは、体育の時間は、よく見学をしていた。
読書を好きになったのは、こんなことが影響しているのかもしれない。
小学校5年の時、父が東京に行った帰りに「勝海舟」の本を買ってきてくれた。本を読んでみたらと。その後、学校の図書室でよく本を借りた。読書カードに本の名前が記載されていくのが楽しみになった。その後も、多くの本を読んできたが、現在では、その機会が少なくなってきた。

定年後、童話を書きたいと考えた時期があった。時間があるので、できるかわからないが、挑戦はしてみたいと思っている。

「絵本の力」河合隻雄 松井直 柳田邦男 岩波書店から

絵本を子どもだけのための書物としてではなく、大人にも深い影響を与える新しいメディアとしてとらえ、絵本がどのように現代の人間の生き方と深くかかわっているかを考える講演と討論の記録である。

著者の一人、柳田邦男さんは、ノンフィクション作家として有名である。柳田さんは、「いのちと共鳴する絵本」として次のように書かれている。

「人は人生の折々に、様々な危機に直面する。そういう試練は、しかし、後になって振り返ってみれば、否定的な面だけではなく、心を耕す何か新しいものを見出す機会だったりすることが少なくないものです。」

柳田さんが厳しい試練に立たされたのは、57歳の時。25歳の次男が長い心の病の末に、自ら命を絶ったのです。自分の生き方がすべて過ちだったように思えて、完全なうつ状態におちいり、何にもできない日が数か月、続きます。

そんな時、書店にふと立ち寄り、気が付いたら柳田さんは、絵本のコーナーの前に立っていた。その中の一冊にくぎ付けになります。
宮沢賢治の「風の又三郎」でした。「風の又三郎」以外にも数冊の絵本を買い、ゆっくりと読んだそうです。

「心がなぜか穏やかに癒されていくのを感じました。絵本一冊一冊の物語に、また、絵や言葉のひとつひとつに、かって読んだ時とは違う深い意味や味わいを見出して、すっかり絵本のとりこになってしまいました。」

「人はせっぱつまった状況に追い込まれたり、大事な人を失ったりしないと、本当に大事なものはなにかに気づかないといわれますが、私が絵本にのめり込んだのも、その時の心境がからんでいたのでしょう。でも、それはありがたいことでした。」

「それから7年になります。その間にずいぶん絵本を読みました。すばらしい発見がたくさんありました。人生後半になって絵本の深い語りかけを再発見したものです。」

「人生後半になってからこそ、絵本をいつも身の回りに置き、じっくりと読むべきという思いです。仕事にあくせくしている中で忘れていた大事なものーユーモア、悲しみ、孤独、支えあい、別れ、死、いのち、といったものがあぶり絵のように浮かび上がってきます。」

「大人が絵本をいつも身の回りに置き、いつも読み親しんでいなくて、どうして子どもに絵本を進めることができるでしょうか。」

柳田邦男さんの講演の記録には、「いのちと共鳴する絵本」として様々な絵本に関するエピソードが書かれているので、次回にまた、書いてみたい。